こんにちは、zukacotoです。
礼真琴さんの新人公演時代をまとめたBlu-ray「ENERGY PREMIUM MAKOTO REI」を観たので感想を。今回は2015年の「黒豹の如く」についてお話していきたいと思います。
もうね、びっくりしました。
今までも新公学年らしからぬ歌唱力を主たる武器にしてクオリティの高いものを見せて下さいましたが、やはりところどころに新公学年らしい拙さも見受けられたのもまた事実で。
でも今回は完璧!指摘すべき点が見つからない。本当に素晴らしくて…。それでは具体的によかったところを挙げていきますね。
礼真琴に柴田侑宏作品は正解である
柴田侑宏先生の作品は古典的な言葉遣いと演出が特徴ですよね。古き良き宝塚を味わうとでも言いますか。これがね、ことちゃんにぴったりハマったなという印象を受けました。
ことちゃん主演の全国ツアー公演「アルジェの男」をご覧になった方はわかると思うのですが、まずことちゃんの持ち前の声の良さが作品の雰囲気によく合うんです。
それから、ことちゃんって目で語る演技ができたり台詞の間を作るのも上手かったりと案外芸が細かいんですよね。それを計算でなく感覚的にできてしまうのがこの方の恐ろしいところなのですが。
それはさておき、あまり激しい展開のない物語って繊細な演技が必要とされると思うのですが、そういった意味で柴田作品が合うなと感じました。
礼真琴の静の演技
さて、そんなことちゃんの演技を私は勝手に”静の演技”と呼んでいるのですが…。今回はその静の演技が本当に素晴らしかったです。具体的に印象に残った場面を二つ挙げますね。
カテリーナとの再会の場面
「やあ、珍しいね。」
「何年ぶりかしら。」
「ちょうど3年…。」
この会話から始まるカテリーナとの再会の場面。普段より低めに作った声ですが、無理がなく深みさえ感じます。
眉間にしわができるくらいカテリーナを見つめる目が優しかったのも印象的でした。この目と眉に、アントニオが心から彼女を愛していて、カテリーナとの再会に内心は心踊らせていることをこちらに悟らせてくれました。
カテリーナとタンゴを踊りながらの会話も、二人とも主演&ヒロイン経験が既にあったからこその余裕が活きていて、ゆったりと時間が流れるような空気感がとても素敵でした。
叔父上との将校クラブの場面
叔父役の飛河蘭さんと二人で作り出す空気感は新人公演のそれとはとても思えませんでした。叔父と甥でありながら友達のような…親子とは違う関係性を完璧に表現されていたと思います。
自慢の叔父貴だ、と部下に話す場面がこの後ありますが、その台詞の通り叔父を好いていて心底尊敬しているのが会話のなかで伝わってきました。
飛河さんの演じる叔父上もアントニオを可愛がり、結婚について心配をしつつも干渉しすぎずにどっしりと構えているところがまさに自慢するに値する叔父上でした。
そんな二人の作り出す空気感が思わず唸ってしまうほど素晴らしくて。近年まれに見るクオリティーの高さを見せていたと思います。
美しい立ち姿と所作
今回の衣装はほとんどが軍服ということでやはり着こなしが難しかったと思うのですが、今回はスッキリと着こなされていました。
ナポレオンやロスグロの時のように男らしくみせようとした結果、微妙になってしまったメイクも今回は地の陰影をつけることでより自然な仕上がりになっていて。
何よりもリーゼントが素晴らしかった!それもそのはず、なんと本役のちえさん(柚希礼音)がことちゃんに似合うリーゼントを一緒に研究してくれたんだそうです。トップさん自ら研究して下さるなんて…ちえさんお優しすぎます。
憂う男のかっこよさ
祖国・スペインの行く末を憂い、焦燥に駆られるシーンがところどころに散りばめられているのですが、これがかっこいいんですよね。
礼真琴が憂うとかっこいい。
これは今やファンの間では当たり前の方程式になっていますが、新人公演時代からその持ち味を発揮していたのだと改めて気付かされました。
そんなことちゃんの得意分野はトップスターお披露目公演でも発揮されています。
その後の大成を予感させるラストシーン
歌劇の礼真琴トップ特集で上田久美子先生がこんなことを書いていらっしゃいました。
『タカラヅカスペシャル』の稽古場で、トップスターとしての彼女に再会した。ナンバーは『黒豹の如く』だ。その時、私は疲れていたのか、新人公演を担当させてもらった感慨も忘れてぼんやりと座っていた。ある瞬間、突然、私は揺り起こされた気がした。視界にきらめく朝の光が広がったかと思うと、透き通った清々しい大気が稽古場を満たした。
目を上げると、礼真琴が一人、微動だにせず歌っていた。その時の驚きを言葉では表せない。ああ、これがトップスターなのか…と思いもよらぬ衝撃を受けたとでもいおうか…。(歌劇2020年2月号 礼真琴トップ特集より)
私もタカスペをライビュで観劇したのですが、上田先生と同じようなことを感じたのでこれを読んですごくびっくりしました。新人公演で演じたアントニオの扮装をして現れた礼真琴が放つ光と精悍な表情に「ああ、これがトップスターなのか…」と私も思いを馳せたのです。
今回、私はこのタカスペの後に初めて黒豹の如くの新人公演を観たわけですが…新人公演のラストシーンのことちゃんがタカスペでのことちゃんと重なって見えて。清々しく晴れ渡ったその表情は、その後の大成を予感させるものがありました。
最後の台詞である「じゃあ、行きます!」は柴田先生が今作で退団となるトップスター柚希礼音のために当て書きをしたものとあって、これをどんな風に言うべきか悩んだといったようなことをインタビューで当時仰っていたのを記憶しています。
新人公演向けに台詞を変えようか、なんて案もあったようですが結局は変更すること無く、ことちゃんに合わせた解釈でこの台詞を言うことに。
良い意味でも悪い意味でも柚希礼音という存在を真っ直ぐに尊敬し、憧れ、目標としてきたことちゃん。ことちゃんの「じゃあ、行きます!」はそんな柚希礼音からの自立と、近い未来に星組を背負っていく存在になるのだという覚悟のようなものを感じました。
おわりに
本公演でも既に重要な立場を任されていたことちゃん。最後の新人公演主演となった「黒豹の如く」ではそんなことちゃんの経験と成長を感じることができました。
余談ではありますが、あまりにも有名すぎる感動エピソードもばっちりと収録されていたので触れておきます。
終演後、幕が再び開いて主演として挨拶をしたことちゃん。本役の柚希礼音さんに向けてこれだけはどうしても言いたいと涙ながらに感謝の言葉を口にしました。
「ちえさんの最後のお役をさせて頂けるのが本当に幸せで…。」
すると、客席から「私もーーー!!」と声が聞えてきたのです。なんと客席でご覧になっていた柚希礼音さんがことちゃんに声をかけて下さったのです。
私も、最後の役をことちゃんにやってもらえて幸せ。そんなふうに憧れの人に言ってもらえるなんて…。でもそれを言わせるだけの素晴らしい新人公演だったと思います。
さて、この公演が終わるとことちゃんは新トップスター北翔海莉のプレお披露目公演「大海賊/Amourそれは…」に出演。
そこには明らかに今までとは顔つきの違う礼真琴がいました。
次の本公演「ガイズ&ドールズ」では女役ではありますが、初のポスター入りを果たします。そして、この公演が最後の新人公演となったことちゃんは本公演で既にメインキャストだったということもあり、後輩たちに主要な役を譲りいわゆる”バイト”に徹することになります。終演後には新人公演の長として挨拶もされたようです。
こうして新人公演時代に幕を閉じたことちゃんは次の公演で3番手羽根を背負い、その1年後には2番手に就任。そして、昨年ついにトップスターに就任しました。新人公演に初主演してからわずか6年弱のことでした。
わずか6年、されど6年。今回このBlu-rayで新人公演時代を振り返りましたが、礼真琴は着実に努力と成長を続け今の立場にあるということを改めて感じることができました。
さて、Blu-ray「ENERGY PREMIUM MAKORTO REI」にて4回に渡って礼真琴の新人公演について振り返ってきましたがいかがでしたでしょうか?ロミオとジュリエット、眠らない男・ナポレオン、The Lost Gloryの新人公演についても感想を書いているのでこちらもぜひ併せてお読み頂ければと思います。それではまた!
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